皆様,
以下の要領でワークショップを開催しますのでお知らせします.
神戸大学 菊池誠
日時:2016年11月5日(土)15:45〜17:45 場所:東京大学駒場キャンパス1号館1階108室
題目:ワークショップ「 2階論理の意味論」 科学基礎論学会2016年度秋の研究例会(非会員は参加費1,000円が必要です) 科学基礎論学会 Web Page:http://phsc.jp オーガナイザ:菊池誠(神戸大学)
提題者: 佐藤智哉 2階論理的妥当性の新しい意味論的特徴づけ 池上大祐(東京電機大学)2階論理とブール値2階論理 新井敏康(千葉大学)竹内の基本予想の意味論的証明
ワークショップ趣旨:
「すべて」や「存在」という量化の対象が「個物」に限定される形式的論理が 1階論理,「個物と概念」であるのが2階論理,そして「個物,概念,概念上の 概念,…」のすべてであるのが高階論理である.1階論理が形式的論理の現在の 事実上の標準理論である.ただし,BoolosやShapiro,Vaananenの哲学的な 議論やFriedmanの逆数学の研究プログラムにも見られるように,今でも2階論理 それ自身や2階論理の上で展開される公理系に関心が持たれている.
2階論理の意味論を考える際に問題になるのが「概念」を対象とする2階量化子の 解釈である.2階量化子の解釈は「個物全体の集合」の部分集合族を与える ことで定められる.最も自然な2階論理の意味論は2階量化子の解釈を与える 部分集合族を「個物全体の集合」の冪集合とすることで定められるが, この意味論では通常の公理と推論規則で2階論理の完全性定理は成り立たない. Henkinは2階量化子の解釈を与える部分集合族を「個物全体の集合」の 任意に選ばれた部分集合族とすれば,通常の公理と推論規則で2階論理の 完全性定理が成り立つことを示した.
Henkin流の意味論が2階論理の現在の事実上の標準的な意味論である.しかし, このHenkin流の意味論に基づく2階論理とは実質的には1階論理の特別な場合であり, 他の意味論の可能性や必要性がない訳ではない.本ワークショップではHenkin流の 意味論以外の2階論理の意味論について,佐藤智哉が哲学の立場から,池上大祐が 集合論の立場から最近の研究を紹介し,新井敏康が証明論の立場から古典的な 議論を紹介する.
提題要旨:
提題1:2階論理的妥当性の新しい意味論的特徴づけ 佐藤智哉
二階述語論理の標準意味論に関する一つの問題は、標準意味論においては 特定の集合の特定の性質に依存するような論証が妥当となることである。 そのような集合論の結果に基づく論証は「集合論的妥当」とでも呼ばれるべきで、 「論理的妥当」な論証とは区別されなければならない。標準意味論の中で 妥当となる論証のうち、どの論証が真の意味での論理的妥当であり、 どの論証が集合論的妥当なのか。二階述語言語の論理的妥当性を特徴づける ためには、標準意味論とは別の新しい意味論システムが必要である。
本発表の主目的は、そのような標準意味論に代わる新しい意味論システムの 紹介である。新しい意味論システムのための一つのアイデアは、論理定項とは 何かという哲学的議論が、論理的妥当性と集合論的妥当性の区別に応用できる ということである。Tarskiに始まる近年の論理定項研究を紹介した後で、 それを使ってどのように二階論理的妥当性が
参考文献 D. Bonnay, Logicality and invariance, The Bulletin of Symbolic Logic, 14, 29–68, 2008. S. Feferman, Logic, logics, and logicism, Notre Dame Journal of Formal Logic, 40, 31–54, 1999 G. Sher, The Bounds of Logic: A Generalized View Point, Cambridge, MA: MIT Press, (1991). T. Sato, A new semantic characterization of second-order logical validity (unpublished). A Tarski, What are logical notions? J. Corcoran (Ed.), History and Philosophy of Logic, 7, 143–154, 1986.
提題2:2階論理とブール値2階論理 池上大祐(東京電機大学)
二階述語論理の代表的な意味論としてタルスキ意味論(完全意味論)と ヘンキン意味論の二つがある。タルスキ意味論を用いると、一階述語論理で 表現できない様々な性質を記述できるが、一階述語論理において成り立つ定理 (完全性定理、コンパクト性定理など)がことごとく成り立たず、 二階述語論理は非常に複雑になる。一方、ヘンキン意味論を用いると、 一階述語論理において成り立つ多くの定理が成り立つが、論理の表現力は 一階述語論理と全く同じで、一階述語論理と比べて二階述語論理に新しい現象は 見られない。本講演では、二階述語論理の意味論としてブール値意味論を導入し、 1) V = L の下ではブール値意味論はタルスキ意味論と同じ複雑さを持つこと 2) 巨大基数とウディンのΩ論理についての適切な仮定をすると、ブール値意味論は、 タルスキ意味論より単純でヘンキン意味論より複雑な意味論になること の二点について論じる。本講演で述べる多くの研究成果は Jouko Vaananen 氏 との共同研究によるものである。
参考文献 D. Ikegami and J. Vaananen, Boolean-Valued Second-Order Logic, Notre Dame Journal of Formal Logic, 56 (1), 167–190, 2015.
提題3:基本予想の意味論的証明 新井敏康(千葉大学)
竹内外史は1953に高階論理GLCを定め,GLCについてCut除去定理が成り立つ という基本予想を提示した.GLCの部分体系である2階論理がG1LCであり, 竹内外史はG1LCの部分体系で基本予想が成り立つことを構文論的に示した. 意味論的には,まずCutを持たない体系の3値モデルに対する完全性がSchutteに よって示され,その後,3値モデルを2値モデルに完備化する方法で,G1LCに ついてはTaitによって,GLCについては高橋元男とPrawitzによって独立に, 竹内の基本予想が成り立つことが証明された.その意味論的な議論を紹介する.
参考文献 新井敏康「竹内の基本予想とは何か,何であるべきか」数理解析研究所講究録, 1442, 1-7, 2005.